
ディナポリ手法のフィボナッチ分析では、複数の測定から得られる価格水準が重なる場所を、押し目・戻り目や決済の候補として確認します。
代表的な考え方が、リトレースメント同士の重なりを見る「コンフルエンス」と、リトレースメントとエクスパンションの重なりを見る「アグリーメント」です。
重なった価格に到達すれば必ず反転する、という売買ルールではありません。
この記事では、元のチャート例を使いながら、測定する波の選び方、MT4での引き方、反転候補をトレード判断に結びつける確認点を解説します。
ジョー・ディナポリは、私が大きな影響を受けたトレーダーのひとりです。
以下はフィボナッチ分析の入門解説であり、ディナポリ氏の手法全体や個別の売買ルールを網羅するものではありません。
コンフルエンスとアグリーメントの違い
| 分析方法 | 組み合わせ | 確認すること |
|---|---|---|
| コンフルエンス | 異なる波のフィボナッチ・リトレースメント | 同じ終点に向かう波の38.2%と61.8%などが近接するか |
| アグリーメント | リトレースメントとエクスパンション | 押し・戻りの候補と、調整波の目標価格が重なるか |
どちらも、別々の測定で得られた水準が近いことを分析材料にします。
同じ波に同じツールを重ねて引いても、独立した根拠が増えるわけではありません。
フィボナッチを使う目的と、比率の意味
フィボナッチは、過去の値幅を基準に、押し目・戻り目や値幅目標を事前に計算するためのツールです。
候補価格を先に描ける点は便利ですが、未来の価格や反転の確率を確定する機能ではありません。
ディナポリ氏の公式書籍紹介の目次では、リトレースメントの主要比率として0.382・0.618、エクスパンションの主要比率として0.618・1.0・1.618が挙げられています。
| 比率・数値 | 意味 |
|---|---|
| 38.2% | 基準となる値幅の0.382倍 |
| 61.8% | 基準となる値幅の0.618倍 |
| 100% | 基準となる値幅と同じ大きさ |
| 161.8% | 基準となる値幅の1.618倍 |
厳密な黄金比は約1.618で、0.618はその逆数、0.382はその逆数の二乗に由来する比率です。
「38.2%と61.8%が黄金比そのもの」というより、黄金比に関連するフィボナッチ比率として理解すると正確です。
どの高値・安値を選ぶかで価格水準は変わるため、比率だけでなく波の選び方も重要です。
コンフルエンスの見つけ方|リトレースメントの重なり
STEP①|大きな波と、その中の小さな波を選ぶ
上昇の例では、目立つ安値から高値までの大きな波と、その中にある小さな上昇の波を確認します。
まず、同じ高値を終点とする2つの波を見つけてみましょう。

小さな揺れを都合よく選ぶのではなく、チャート上で説明できる高値・安値を使います。
時間足が異なること自体が条件ではなく、異なる起点の波を測定している点を確認してください。
STEP②|38.2%と61.8%が近接する場所を見る
大きな波と小さな波それぞれに、フィボナッチ・リトレースメントを引きます。

この例では、赤色の週足安値から高値までの38.2%と、青色の日足安値から同じ高値までの61.8%が、ほぼ重なっています。
このように異なる波から得られたリトレースメント水準の近接を、コンフルエンスとして確認します。
上昇波の押し目候補価格は「高値-(高値-安値)×比率」で計算できます。
下降波の戻り目候補価格は「安値+(高値-安値)×比率」です。
STEP③|到達だけで売買せず、反応を確認する
価格が候補帯に近づく前に水準を引いておき、到達後の値動きを観察します。
上昇の押し目買いを考える場合は、下落の勢いが弱まるか、ローソク足や直近の高値・安値に変化があるかを確認します。
下落が続き、想定した支持帯を明確に通過する場合は、買いの判断を見送ることも必要です。
決済候補として使う場合も、保有方向・損切り・目標価格を含む事前の計画に合わせて判断します。
フィボナッチ・エクスパンションの役割と計算
リトレースメントが押し・戻りの深さを測るのに対し、エクスパンションは最初の波の値幅を3点目から投影して目標価格を計算します。

このチャート例では、100%や161.8%の近くで値動きの変化が見られます。
ただし、画像だけで実際の決済注文が入ったことや、他の相場でも同じ反応が起きることは確認できません。
続く波でも、同じ考え方で目標候補を測定できます。

反応した事例だけで有効性を判断せず、通過した事例も含めて検証してください。
N値計算と、3つの目標価格

上昇の例では、安値Aから高値Bまでの値幅を、押し目の安値Cから上へ投影します。
100%の目標は「C+(B-A)」で、N値計算と同じ値幅の考え方です。
たとえばA=100、B=110、C=106の場合、最初の値幅は10です。
| 比率 | 計算式 | 計算例の価格 |
|---|---|---|
| 61.8% | C+(B-A)×0.618 | 106+10×0.618=112.18 |
| 100% | C+(B-A)×1.0 | 106+10=116 |
| 161.8% | C+(B-A)×1.618 | 106+10×1.618=122.18 |
上の数値は計算方法を説明するための仮の例で、実際の売買や到達を示すものではありません。
下降の例では、Aを高値、Bを安値、Cを戻り高値とし、「C-(A-B)×比率」で下方向の候補を計算します。
値幅の計算は、FXの値幅計算|N値・E値・V値・NT値でも解説しています。
MT4でエクスパンションを引く方法
以下はWindows版MT4の説明です。
元の操作画像は保持していますが、利用環境によってアイコンの位置や見た目は異なる場合があります。

上部メニューの「挿入」→「フィボナッチ」→「エクスパンション」を選びます。
よく使うツールの表示は、MT4の分析ツールをツールバーに表示する方法も参考にしてください。

上昇の例では、安値Aを1点目、高値Bを2点目として、AからBへドラッグします。

作成したオブジェクトを選択し、3点目のハンドルを押し目の安値Cへ合わせます。
全体を平行移動するハンドルと、個別の点を調整するハンドルを取り違えないように、A・B・Cの3点を確認してください。
動かせないときはオブジェクトをダブルクリックし、選択マーカーが表示されるかを確認します。
選択方法はMT4の設定で変わるため、シングルクリックで選択する設定の場合もあります。
詳しい引き方や数値設定は、フィボナッチエクスパンションの引き方と数値設定をご覧ください。
アグリーメントの見つけ方|押しの候補と調整波の目標
STEP①|トレンド方向の波にリトレースメントを引く
上昇トレンドの押し目を考える例では、基準となる上昇波にリトレースメントを引きます。

38.2%・61.8%の価格を、押しの深さの候補として確認します。
STEP②|調整波にエクスパンションを引く
次に、トレンドと逆方向へ進む調整波の3点を使い、下方向の目標候補を計算します。

上昇波のリトレースメントと、調整の下降波のエクスパンションは、別々の波を測定しています。
STEP③|両方の価格水準が重なる場所を確認する
| 測定するツール | 本記事のチャート例で確認する水準 |
|---|---|
| 上昇波のリトレースメント | 38.2%・61.8% |
| 調整波のエクスパンション | 61.8%・100% |
エクスパンションの主要比率には161.8%もありますが、以下の図ではリトレースメント61.8%とエクスパンション100%の組み合わせを確認します。

重なる箇所を拡大した画像が、こちらです。

青色のリトレースメント61.8%と、調整波のエクスパンション100%が近接しています。
このように押し・戻りの候補と、調整波の目標が一致する箇所を、アグリーメントとして確認します。
離れた水準を広い帯で囲い、後から「重なっていた」と判断することは避けてください。
許容する価格差は時間足や通貨ペアの値動きも踏まえて事前に決め、同じ基準で検証します。
STEP④|反転の確認と、判断が崩れる条件を決める
候補帯に到達した後、ローソク足や高値・安値の変化を確認します。
本記事では、フィボナッチの位置に加えてプライスアクションを確認する方法を紹介しています。
ローソク足の読み方は、プライスアクションの基本とシグナルをご覧ください。
確認方法、損切りの条件、決済候補は、エントリー前に決めておきます。
注文が重なるという説明は、仕組みの仮説として考える

上昇の押し目買いを検討する人と、調整中の売りポジションを決済する人が、同じ価格帯で買いを考える可能性があります。
このような注文の重なりは、反発を説明するひとつの考え方です。
ただし、フィボナッチの線や過去チャートだけでは、実際の注文量や注文理由を確認できません。
「重なれば注文が集中して必ず反発する」と断定せず、目の前の価格の反応と合わせて判断してください。
反転しない場合と、見送るための確認表
| 確認点 | 判断の考え方 |
|---|---|
| 波の起点・終点を説明できるか | 反応した場所に合わせて引き直すだけなら、測定の基準を見直す |
| 水準が実際に近接しているか | 遠い水準を同じ候補帯として扱わない |
| トレンドの前提が残っているか | 重要な高値・安値を崩した場合は、押し・戻りという前提を再確認する |
| 到達後に反転を確認できるか | 強い勢いで通過する場合や確認ができない場合は見送る |
| 損切りまでの距離が大きすぎないか | 許容損失とロットを確認し、条件に合わなければ取引しない |
| 成功例だけを集めていないか | 反転しない例と取引コストも含めて結果を記録する |
線の重なりは、トレードを検討する場所を絞るための材料です。
不利な条件まで無視してエントリーする理由にはなりません。
ハーモニックパターンとの関係|PRZも反転候補帯

ハーモニックパターンも、複数の波のフィボナッチ比率から反転候補を分析します。
PRZはPotential Reversal Zoneの略で、日本語では「潜在的反転ゾーン」と呼びます。
ディナポリ手法と共通する発想はありますが、パターンごとの比率や成立条件は別に確認する必要があります。
PRZも反転を保証する場所ではなく、到達後の反応を確認する候補帯です。

ハーモニックパターンの基本と反転候補ゾーンの分析では、特徴や判断の注意点を解説しています。
ディナポリのフィボナッチ分析でよくある質問
コンフルエンスとアグリーメントは同じですか?
同じではありません。
前者は異なる波のリトレースメント同士、後者はリトレースメントとエクスパンションの重なりを確認します。
38.2%と61.8%に届いたらエントリーしてよいですか?
比率への到達だけでは売買の判断はできません。
相場の流れ、測定した波、到達後の値動き、損切り条件を合わせて確認します。
コンフルエンスは日足と週足でしか使えませんか?
この記事の画像は日足と週足の例ですが、異なる時間足の組み合わせだけを条件にしているわけではありません。
同じ終点に向かう異なる起点の波を測定し、得られた水準の近接を確認します。
エクスパンション100%とリトレースメント100%は同じですか?
同じではありません。
エクスパンション100%は最初の波と同じ値幅を3点目から投影した価格で、リトレースメント100%は基準の波を全て戻した位置です。
まとめ|比率の重なりと、価格の反応を分けて確認する
コンフルエンスはリトレースメント同士、アグリーメントはリトレースメントとエクスパンションの重なりを確認する分析です。
波の選び方と比率を一定にし、候補帯への到達後に何を確認するかも決めておきましょう。
私自身も多くの手法やインジケーターを学び、検証したうえで、ローソク足を重視するようになりました。
使うかどうかを決める前に仕組みを理解し、自分の判断に役立つかを検証する姿勢を大切にしています。
DMAを使ったディナポリ手法は、以下の関連記事も参考にしてください。
参考:Coast Investment Software「Trading With DiNapoli Levels」目次 / MetaQuotes「Line Studies」
















